‘LakeAir0621’で主要な冒険の舞台となるのがこの“湖岸の王国”ザインです。 北はエア湖を挟んでファンドリア、ラムリアースと接し、西にオーク・ロマール王国を望み、東方には「アトンの災厄」によって生じた大荒野が広がっています。 同名の首都ザインの周辺はエア湖の水と肥沃な土に恵まれた穀倉地帯であり、人口が最も多いのもこの地域です。商業に目を転ずれば、エア湖の水上交通を利用してファンドリアやラムリアースなどの中原諸国家との交易も盛んです。また、ザイン市内には3つの盗賊ギルドが存在し、互いに凌ぎを削っています。 気候は温暖で、冬も雪が積もることはほとんどありません。 |
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中央を旧自由人の街道が貫き、また運河が縦横に走っています。運河は濠としての役割も持っており、要所要所に築かれた土塁とともに街を守っています。土塁のいくつかには見張り塔が付随して建てられています。また、下水道も整備されており、ザインの市街に張り巡らされ、運河とつながっています。下水道は人が行き来できる広さがあり、浮浪者や犯罪者が生活していることもあります。
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オランが「アトンの災厄」によって壊滅的な打撃を受けたとき、オラン市民の多くが難民となって周辺諸国に逃れました。その難民の最大の受け入れ国がザインでした。さらに後の「オーク寇」によって、ロマールからも多くの難民が流入しています。
621年現在、ザイン国内には約110万人の住民がいます。そのうちの約2割が難民や移住者の子孫で、1割が非人間種族です。都市の周囲にはイーストエンドから渡ってきた人たちの集落がそこかしこに存在しています。また、イーストエンド人と一緒に移住してきたノーブル・リザードマンを中心として、エア湖の畔にリザードマンたちの巨大な共同体が生まれました。湖の南に連なり立っている連奇岩はフェザーフォルクの支配する領域で、時折ザインの商人との間で交易が行われています。
内訳は以下の通りです。
人間 | ![]() |
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ザイン人 | 750,000 | |
オラン人 | 170,000 | |
ロマール人 | 50,000 | |
イーストエンド人 | 20,000 | |
計 | 990,000 | |
非人間 | ||
エルフ | 25,000 | |
ドワーフ | 18,000 | |
グラスランナー | 8,000 | |
フェザーフォルク | 6,000 | |
リザードマン,スレイブ | 27,000 | |
リザードマン,ノーブル | 2,000 | |
オーク | 20,000 | |
ハーフエルフ | 5,000 | |
ハーフオーク | 3,000 | |
その他 | 8,000 | |
計 | 122,000 | |
総計 | 1,112,000 |
ザインでは西方語が公用語として使われていますが、オラン難民の子孫は東方語を、イーストエンド人はイーストエンド語をそれぞれ使用しています。
なお各地方語の識字率はそれぞれ約95%です(知力6以上の「一般人」は母国語の読文能力を持っています)。
表向きは王の下に全ての権力が集中する絶対君主制ですが、実際にはイェゼール家、ビューリィ家、アスグリム家、エイジズ家、ラルス家、ハーコン家の6つの有力貴族が政治を動かしています。王は彼らの意見を無視することができません。また、各非人間種族の代表も大きな発言力を持っています。
貴族はそれぞれが自分の所領と私兵を持ち、領内では絶対的な支配者として君臨しています。彼らは時に武力で、時に陰謀で、また時には同盟を組むなどしながら互いに勢力争いを繰り広げています。
都市のいくつかは王権および六貴族家から独立し、自治権を持っています。そのような都市は一部の富裕商人による合議制によって治められているのが一般的です。
【概略】
国王が直接支配する地域、各貴族家の領地、神殿、竜の寺院、それぞれに別個の法律が存在します。
ザイン市内は国王の領地ですので、国王の定めたザイン法が適用されます。ザイン法は貴族法と市民法の2つに分かれており、市民法の中でも定住市民と非定住市民(賤民や外国人、冒険者など)の扱いは微妙に異なります。非定住市民よりは定住市民が、市民よりは貴族がより優遇されます。
六貴族家の当主およびその一族、異種族の種族代表とその一族、および一部の聖職者(五大神の神官・司祭、および竜僧)には国の法律が適用されません。また、ザイン市内であっても、神殿、賢者の学院、竜の寺院、六貴族家の屋敷などに官憲が立ち入ることはできません。
なお、ザインにおいては一般市民による自力救済(司法手続を経ずに行う仇討ちなど)もある程度は認められるのが慣習になっています。
【刑罰】
ザイン市内法における代表的な刑罰を以下に挙げます。
正当防衛や緊急避難など、正当な事情があれば刑が免除されたり減刑されることがあります。その一方で自分の親を傷つけた場合などには刑が加重されることもあります。殺人や傷害の相手が邪教徒であった場合、一般に正当な事情があったとみなされます。
【階級ごとの扱い】
上に挙げた刑は全て市民が市民に対して罪を犯した場合です。市民が貴族を害した場合には刑が加重されます。市民が貴族を殺してしまった場合などは、罪を犯した本人だけでなくその家族までが罪に問われることもあります。
逆に貴族が市民を害した場合には相当の減刑が行われます。罰金や謹慎、禁固が主なものですが、大量殺人などの特に重い罪を犯した者は自殺を勧められることもあります。また、同じ罪を犯した場合でも下級貴族ほど刑罰は重くなります。というよりも、貴族の罪が厳密に法で裁かれることはほとんどないのです。貴族が罪を犯した場合、それに対して科される罰は「貴族階級全体の名誉」を傷つけたことへの補償であると考えられ、その程度において政治的な決着が図られます。貴族が貴族を害した場合も同様で、法律よりも貴族同士の力関係が物を言います。このため、貴族法には「さまざまな自殺方法とその序列」や「代理決闘の方式」などを定めることに多くの項目が割かれています。
国外から来た貴族には市民法が適用されます。もちろん相応の減刑はありますし、同じ刑罰が科される場合でも名誉への配慮がなされます(絞首刑が毒殺になるなど)。ただし、公用でザインに来た国外貴族へは治外法権が認められます。
非定住市民が定住市民を害した場合には刑が加重されますが、定住市民が非定住市民を害した場合であっても減刑などの措置はありません。
五大神に仕える神官・司祭、および竜僧たちには世俗の法が適用されません。逮捕されることはありますが彼らは直ちに所属する神殿や寺院に引き渡されます。代わりに神殿や寺院で審問を受け、それらの法に照らして罪が認められれば相応の罰を受けることになります。場合によっては破門された上で官憲に引き渡されることもあります。
【法律の及ぶ場所と及ばない場所】
以下の場所には国の警察権が及びません。
- 神殿(五大神以外の神殿を含む)
- 賢者の学院
- 竜の寺院
- 六貴族家の屋敷
官憲が職務としてこれらの敷地内に立ち入ることは許されません。罪人がいったんこれらの中に逃げ込むことに成功すれば、各場所の長(神殿長など)が引き渡しに応じるか罪人が敷地の外に出て行かない限り、その者が逮捕されることはありません。
【官憲の活動】
官憲の活動は基本的に街の中に限られます。罪人が市外に出て城壁の見張り塔から見えなくなる距離まで逃げ延びた場合には、それ以上追われることはありません。
実際の犯罪捜査はお世辞にも厳密なものとは言えません。罪人の行方を見失った場合にはそのまま捜査を打ち切り、後の追跡は賞金稼ぎに任せるのが普通です。また、犯人がはっきりしない場合には身よりのない乞食や外国人を捕らえ、拷問の末に罪人とでっち上げることも一般に行われています。冒険者もよく狙われますが、手練れの冒険者(ほとんどのPCは「手練れの冒険者」に含まれます)であれば理由もなく捕らえられることはほとんどありません。彼らを捕らえようとすれば官憲へ多くの被害が出ると予想されるためです。
【復讐権と避難所】
ザインにおいては官憲の捜査能力が低く、また、街の外に逃れた罪人を追うこともないため、一般市民に対しても実力で罪人に復讐する権限が与えられています。本来は貴族にのみ与えられた権利でしたが、現在では既成事実を追認する形で一般市民にも同じ権利が認められています。
人を殺してしまった場合でも、裁判によって過失によるものだと認められれば遺族に対する損害賠償で片が付くのが通例です。しかし、罪人とされる者が過失や冤罪を主張する場合でも、官憲の手を通さなければ、私怨に狂った遺族によってそれらが無視され、殺されてしまうこともしばしばでした。このような復讐の行き過ぎ防止と罪人捕縛の要請との調和を保つために、罪人とされる者が一定の場所にいる場合は遺族・被害者の実力行使を制限する制度が定められています。このような場所を「避難所」と呼びます。一般に、被害者・遺族と罪人とが立ち回りを演ずるのに不適当であるとみなされている場所が避難所とされます。主な避難所には以下のものがあります。
- 渡し船の上
- 橋
- 墓地
- 酒場・宿(冒険者の店を含む)
- 一般市民の家(ただし家主の許可を得た場合、および罪人本人の家である場合を除く)
罪人が避難所に逃げ込んだ場合、遺族・被害者はそれ以上の追求を諦めなければならず、以後の処置は官権の手に委ねられることになります。もちろん、神殿その他の官憲の力が及ばない場所でも実力行使は認められません。
【民事事件】
民事事件においては市民よりも貴族が、非定住市民よりは定住市民がより有利に扱われます。
【PCの階級】
生まれが「騎士/貴族」である者、およびノーブル技能を3レベル以上所持している者は、ザイン出身であれば貴族として扱われます。そうでなければ国外貴族として扱われます。オーク・ロマール王国出身のオークは皆、国外貴族として扱われます。ハーフエルフおよびハーフオークの貴族はザイン出身であっても国外貴族として扱われます。
ザイン出身で生まれが「魔法使い」、「一般市民」、「商人/学者」であるものは定住市民として扱われます。ハーフエルフおよびハーフオークは貴族の場合と同様、ザイン出身であっても国外出身者として扱われます。
五大神のプリースト技能、およびドラゴンプリースト技能を所持している者は聖職者として扱われ、世俗の法によって裁かれることはありません。
上記以外の冒険者は皆、非定住市民となります。
一応は500人の兵士が王直属の常備軍として存在し、基本的な兵科(歩兵科、騎兵科、砲兵科、工兵科)に分けられてもいますが、練度も低く、あまり頼りになりません。
代わって活躍しているのは各六貴族家が抱えている私兵たちです。形式は常備軍や民兵、傭兵などとそれぞれの家ごとに異なりますが、どれも適切に組織されており有事の際には充分な戦力となります。これらの私兵のうち普段から稼働しているのは7,000人ほどですが、有事の際には王国全体で3~4万人の兵員を動員することができます。
なお、これら六貴族家の戦力を合わせれば、ザイン全体の軍事力は大陸でも決して少ないものではありません。
【海賊と王国公認海賊】UP!
「オーク寇」がもたらした急速な海上輸送の発達と共にエア湖をとりまく航海事情は一変し、エア湖の南に位置するザインと北のラムリアース間を多くの商船が往来するようになりました。しかし、それは海賊による犯罪という新たな社会的驚異を産む事になりました。
そこで、続発する海賊被害に対抗すべく、ザイン王国は「私掠船免許」を発行します。
これにより「私掠船免許」を持つ海賊、つまり、国公認の海賊が誕生しました。(ヨハネスさんより)
【私掠船免許】UP!
ザイン王国が海軍戦力を補うために海賊を活用する方便として発行したものです。
ザイン王国は私掠許可証によって海賊を公認すると共に海軍の指揮系統に組み込み、遊撃任務に当たらせました。
海賊免許の下で活動する海賊は軍隊に準じて扱われるため、業務中の船長は船長服の着用を義務づけられます。(ヨハネスさんより)
ザインではマーファ神殿が最大の勢力を保っており、事実上の国教として扱われています。歴代の王も伝統的にマーファを信仰しています。
リザードマンの集落にはドラゴンプリーストのための寺院が存在し、リザードマンやイーストエンド人を中心として熱心な参拝者が訪れています。
盗賊ギルドに所属する者はそのギルドから「『仕事』に必要な人員」、「『仕事』に必要な情報」、「逃走時の援助」などを受けることができます。
ザインには3つの盗賊ギルドが存在し、それぞれに縄張りを持っています(逆に言えば縄張りの外へは支配力を持ちません)。
盗賊ギルドは縄張り内の富豪たちから「保護料」を受け取っています。「保護料」を収めている者を相手に「仕事」をする事は固く禁じられており、これに反した場合には厳しい制裁を受けます。しかし実際には「保護料」を収めている富豪が盗賊の被害に遭うことは多いのです。というのも、盗賊たちはしばしば他のギルドの縄張りに出かけていって「仕事」をするからです。もちろん「仕事中」のところをそこの盗賊ギルドに見つかれば大変なことになりますが、無事にその縄張りを脱出することができればそれ以上追われることはありません。このためザインにはフリーで仕事をする盗賊も相当数存在します。
ある富豪が複数の盗賊ギルドに「保護料」を払うことはできません。それはギルドの面子を潰す行為だからです。一方で、どうせ「保護料」を払っても無駄と諦めている富豪もいます。彼らの多くは自分たちで警備兵を雇うことでその身と財産を守っています。
ザイン市内で最大の勢力を持つ盗賊ギルドです。残忍で強烈な指導力を持つ首領の下で日夜悪行の限りを尽くしており、窃盗、強盗、暗殺、麻薬や奴隷の売買など、非人道的なものを含むあらゆる犯罪行為に手を染めています。キャグニー一家による盗賊行為はお世辞にもスマートなものとは言えず、家人が皆殺しにされることも珍しくありません。
ファンドリア盗賊ギルドとの関係も噂されています。
キャグニー一家に迫る勢力を持つ盗賊ギルドで、貧困層の若者を中心に支持を広げています。貴族や富裕商人が主な標的とされ、特権階級を標的としたものであれば暗殺の仕事も請け負います。独自に要人の暗殺を計画することもあります。一般市民の殺害は原則として禁じられていますが、「やむを得ない犠牲」を出すことは容認されています。
他2つの盗賊ギルドと比べれば弱小としか言いようのないギルドで、実構成員数もそう多くはありません。しかし、昔気質のガネード信者を中心に先代、先々代からのシンパも多く、その経済力には侮れないものがあります
盗みの標的は富裕層に限られ、また、仕事に際して人の命を奪うことは理由の如何を問わず認められません。麻薬や人身の売買も厳しく禁じられています。
ヒルダリン・ミルダハ・ザイン(人間、女、17歳)
第6代ザイン王にして第3代ザイン女王。まっすぐ腰まで届く艶やかな黒髪、サファイアを思わせる深い青の瞳と透き通るような白い肌の持ち主。
本来であれば慈悲深く聡明な、名君と呼ばれるに相応しい女王である。しかし、ヒルダリンは先代の早世により王位に就いた若い女王であり、経験が不足しているため臣下や諸侯たちからは軽んじられている。さらに、長い内乱、「アトンの災厄」、そして「オーク寇」と続いた混乱に乗じて六貴族家が力を強め、ザイン国内に強い影響力を持つこととなった。このため、ヒルダリンの権力は首都ザインとその周辺の狭い地域に限られている。
最近、「ブラッド・ダイヤモンド事件」をきっかけとして民衆や各神殿、小貴族たちからの支持が高まっており、政治への発言力も次第に増してきている。(追加:煙屋さんより)
シャルロット・アマル・ザイン(人間、女、14歳)
ヒルダリンの異母妹。太陽のような美しい金髪と、強い意志を感じさせる青い瞳、そして年齢よりもやや下に見られがちな小柄な体躯の持ち主。
姉と同じく聡明で、女にしておくのがもったいないほどの豪胆で気丈な性格。表面上は非の打ち所のないお姫様を演じることもできる。王族の悲しさ
で、近々ラムリアース王家との婚儀が決まっている。あまりの幼すぎる姫の婚姻に、周囲の者には哀しんでいるものもいるが、当人はさして悲観もしておらず
「ラムリアース がいかほどのものか確かめてやろうて」と案外乗り気。この婚姻によりラムリアースとの繋がりが強化されれば、ファンドリアとの交易が少なくなるのではと、
ファンドリア系の商人達は危惧している。(煙屋さんより)
ジャルティ・アスグリム(人間、女、39歳)
アスグリム家の当主。ザイン王家摂政。指導者として申し分のない風格を備えた女丈夫。肩口で揃えたブラウンの髪に均整の取れた体格。一級の戦士であり、また、優れた軍略家でもある。最近、東の妖魔との戦いで醜態を晒し、その汚名を濯ぐために必死である。一方で欲深い人物でもあり、金庫に財貨を貯め込むことを喜びと感じている。
カーティス・アスグリム(人間、男、43歳)
ジャルティの腹違いの兄。青い髭とがっしりとした体躯の持ち主。通称“青髭公”。強い権力志向の持ち主で残虐な男。血筋に絶対的な価値を見ており、貴族以外は人間ではないと思っている。そのため、自分よりも年齢が下で、しかも血筋の劣る妹が当主の地位に着いたのを快く思っていない。ジャルティが東の妖魔との戦いで不名誉を受けた時、真っ先に喧伝したのも彼であった。(煙屋さんより)
アーフィア・ハーコン(人間、女、40歳)
ハーコン家の当主。ふくよか。甘いものに目がなく、体重やウエストを気にするのはもう何年も前からやめている。今の仕事に飽き飽きしており、家を捨てて逃げ出したいといつも考えている。
ボードワン・ハーコン(人間、男、32歳)
アーフィアの弟。痩せ型ではあるが筋肉質の体躯。金髪を後に撫でつけ、一部の隙も無いほど整えている。性格は几帳面で礼儀と規律に厳しい。厳格なファリス信者で、当初、ファリス聖堂騎士団にて僧籍に入る教育を受けていたが、長男の死亡やアーフィアの当主相続に伴い、途中で還俗した。
「自分は当主である姉の補佐」という立場を崩さず、嫌がる姉を執務につかせている。現ハーコン家を支えていると言うのは過言ではない。ストイックで装飾品や贅沢品を好まず、食事も質素に済ませがち。(煙屋さんより)
ローンハルト・ビューリィ(人間、男、35歳)
ビューリィ家の当主。彫りの深い顔立ち。若年ながら聡明で、品行方正な穏健派。前当主が死に、早くに家督を受け継いだ。敬虔なマーファ信者でもある。
「ブラッド・ダイヤモンド事件」に際し、真っ先にヒルダリンの呼びかけに答えたことから親国王派と見られている。(auさんより)(追加:煙屋さんより)
ヤゼール・エイジズ(人間、男、63歳)
エイジズ家の当主。痩せぎすで鋭い目鼻立ちの老人。顔に似て言葉遣いもとげとげしい。昔は好戦的な性格で有名だったが、体力の衰えとともに知謀知略を好むようになった。ここ数ヶ月、人前に全く姿を現していないことから巷では死亡説も囁かれ始めていたところ、最近になって「ブラッド・ダイヤモンド」という魔法技術を用いたおぞましい実験に手を染めていたことが明るみとなった。後に「ブラッド・ダイヤモンド事件」と呼ばれるこの騒動の中でヤゼールは死亡し、遺体は孫ザキールによって女王ヒルダリンの下へ届けられた、…とされている。また、公式な記録は「自殺」と伝えている。
ヤゼールの人格が「ブラッド・ダイヤモンド」によりドラゴンの幼体に移し変えられ、行方をくらましたことは、彼を始末にいったザキール・エイジズと彼の側近しか知らない。このドラゴンがどれだけの期間でどのように成長するかは判っていない。そして、彼が自分を権力の座から追いやったものに対して、いつ、どのような行動に出るか誰にも判らない。(エイマーさんより)(変更:煙屋さんより)
ザキール・エイジズ(人間、男、24歳)
ヤゼールの第一子セイエドの嫡子。その才覚からヤゼールに「いつか権力の座を奪われる」という疑心を抱かれ、辺境の一領主の地位に押し込められていた。しかし「ブラッド・ダイヤモンド事件」の際、ヤゼールを捕らえる為に私兵を動かし、ヤゼールの死体を女王に届けたことにより、エイジズ家当主の座につく。
当主着任後、減税や治安維持軍の強化などに努め、名君と言われている(実のところ、ヤゼールと容貌も性格もよく似ている)。
なにごとも自分のコントロール下に収めていないと気に食わない性格。冒険者をコントロール下に置くため、ごろつき冒険者による陰惨な事件を捏造し、エイジズ領内において「冒険者領主認定制」を導入した。これは領主に認定された冒険者以外、領内での冒険者活動を禁じる制度である。
また、秘密裏に出資して「エイジズ・タイムス」という新聞社を立ち上げた。(煙屋さんより)
ヅイナ・ラルス(人間、女、53歳)
ラルス家の当主。ファンドリア人とのハーフで、背が高く、彫りの深い顔立ち。商才に長けた人物で、計算高く、抜け目ない。
ラルス家は元々エア湖の水運を中心に活動してきた豪商の家系であり、小国に匹敵するほどの巨大な財を蓄えている。ヅイナの先代はオーク・ロマールのザイン侵攻にあたってエア湖の水運業者を糾合し、ラムリアースやファンドリアから大量の物資を買い付けることでザイン軍の兵站を裏で支えた。
サルバドゥ・ラルス(人間、男、28歳)
ラルス家の三男。彫りの深い顔立ち。かつては神童と言われた天才だったが、現在は放蕩のあまり、家から勘当同然の扱いを受けている。エア湖で何か大規模なサルベージ作業を、秘密裏に行っているという噂がある。オーカス信徒。(SONEさんより)
エルネスト・イェゼール(人間、男、28歳)
イェゼール家の長子であり、当然に次代当主とみなされている男。タカ派。策士。イェゼール家の実権を握っているが、イェゼール家への批判は現当主ダナンへ向くよう巧妙に仕向けている。
所帯こそ持たないが、手癖の悪さは有名で多くの浮名を流している。かつてザイン王国が行ったマーファ信仰弾圧に共感するマーファ否定派の一人であり、現ザイン王国へのマーファ神殿の影響力を削ぐべく画策している。(星辰さんより)
ダナン・イェゼール(人間、男、60歳)
イェゼール家の現当主。禿げ上がった頭が内外からの艱難辛苦を体現している。
目下最大の悩みは辣腕を振るう息子で、当主たる地位をないがしろにされている現状に危機感を抱いている。が、その息子なしにイェゼール家の存続が困難である現状も認識しており、苦悩の日々はなお続く。(星辰さんより)
タナカ・オキツグ(人間、男)
商人に積極的に働きかけ実利的な行動で武家の発展に貢献するがその傍ら私腹を肥やす、賄賂大好き!(ヨハネスさんより)
ブラックフェアー(公明正大な黒)
汚職政治家や悪徳商人等の依頼を受け賄賂の仲介を行なう悪徳行為の互助会組織の総統。
総統の名前から組織名はBF団と呼ばれる。「程良く腐ってぬるめが最高」という考えが世の廃退思想にマッチし政治・軍事・悪党等に幅広く侵食し廃退思想集団として勢力拡大。その勢いはザイン中央に留まらず辺境に拡散中だが表立った影響はみられない。
総統の正体はザイン在住の上級武士タナカ・オキツグでブラックフェアーは彼が造った虚構の人物。(ヨハネスさんより)
シラカワ・サダメル(人間、男)
武家の経費削減を薦めを説き、武家の財政引き締めに貢献するが内輪ウケはいまいち、倹約大好きな合理主義者。(ヨハネスさんより)
ヤスカワ・ゲン(人間、男、48歳)
ザイン在住の国外貴族で、シラカワ・サダメルの『武家の経費削減を薦め』を自分の組織財政回復のために合理的な解釈を加えた『財政補完計画』なるものを制定し、自組織の従者に対して厳しい俸給の減額等を実行して財政を立て直した人物。
噂ではゲンの組織(通称エル)は金銭面や対妖魔用オートマトンに関する技術の提供でアスグリム家と繋がりを持ち、ザインの政治に影響を与える程に力をつけてきているらしい。
ゲンには妻と娘がいるが、『財政補完計画』により妻子を失った下級僧兵(クワモチ・リョウ)に恨まれ、妻(ヤスカワ・ユイ)を殺されてしまう。ゲンは娘(ヤスカワ・レイ)にも危害が及ぶことを恐れて、どこか別の場所で匿ってもらうため、秘密裏に教育兼世話係(マリー・ロエル)と共にレイを旅立たせ、無事成功したらしい。(疾風さんより)
グレゴール・ヨハン(人間、男、58歳 プリースト7)
ファリス神殿ザイン教区の補佐司教。ザイン・ファリス教会のNo.2。厳しい顔つきで、刻まれた皺がそれに拍車をかけている。
平民の出である。いわゆる叩き上げ。5年前まではよく現場に出ていたが、以降は教会内での活動に専念するようになった。信仰を重んじるあまり、政治的な判断は苦手である。
同じくザイン・ファリス教会のNo.2アレッサンドロ司教からは目の敵にされている。(煙屋さんより)
アレッサンドロ・アスグリム(人間、男、63歳 ホーリーオーダー8)
ファリス神殿ザイン教区の補佐司教。ザイン・ファリス教会のNo.2。禿頭、贅肉に包まれた体躯の持ち主。六貴族家アスグリム家の一族。
様々な黒い噂があるが、それら全てを力でねじ伏せている。愛人が5人おり、子供は10人を越えるのは公然の秘密。平民の出のグレゴールが自分と同格なことが気にくわず、グレゴールを目の仇にしている。
アレッサンドロは奇跡がまったく使えない。昨今のファリス教会において奇跡の使えない司祭も珍しくはないが、一切神の声を聞くことなく司教の地位に至ったのはアレッサンドロが初めてである。グレゴールが奇跡を使えることもあり、本人もそれを引け目に感じている。従者に奇跡を使えるものを数人、常に従わせており、それで対処している。(煙屋さんより)
ヤマ・ダァール(ノーブル・リザードマン、男、850歳)
最も竜に近い、とされる偉大なる竜司祭。ノーブル・リザードマンの種族代表でもある。いつもは竜寺院の奥で眠るように瞑想を続けている。ここ半年あまり表舞台に立っておらず、いよいよ解脱の前触れか?と囁かれている。身の丈3メートル半、赤銅色の鱗。禁欲的な修行僧。(SONEさんより)
“奇跡の母”ソチェッタ(人間、女、89歳、プリースト9)
ザイン・マーファ神殿の最高女祭。若い頃はやや太めでふっくらした顔をしていたが、年をとってからは少し細くなってきた。ひっつめ髪。生涯で4男52女を設け、その偉業から「奇跡の母」と称される。年の割に元気。ただし腰は悪いらしい。第一線からは身を引いているものの新年の祝いには毎年必ず顔を出す。
ドボレーツ=ボリショイクレムリ(ドワーフ、男、143歳)
エレミア出身の名鍛冶工。ドワーフの例に漏れずガタイが良く、肌は褐色?
髭が腰辺りまで伸びている。
かなりの頑固親父でしかも好色だが、鍛冶の腕は大陸屈指。アトンの災厄を生き延び、ザインに避難して来たが難民区での生活に馴染めず、今は郊外にドワーフだけの村を興して自分の理想郷を作り上げるべく努力中。品質5の武具を製作可能。(秦さんより)
ネディ・イェジェイ(人間、男、40歳、コック6)
ザイン出身者なら誰もが知っている「豊満な山猫亭」の料理長。
「豊満な山猫亭」とは、中流階級の住宅街にある、ザインでは最も名の知れたレストラン。決して最高峰のレストランというわけではなく、ランク的には、金持ちの御用達で庶民の憧れ。これ以上の店、すなわち庶民にとっては憧れにすらならない貴族御用達の店は庶民が知らず、これ以下の店、すなわち貴族たちは決して行かないような店は貴族が知らない。結果、ザインで最も有名となった。(エス・リュウさんより)
チョンヒ・タカハシ(人間、男)
ザイン・イーストエンド区の顔役。国粋主義者。同邦の民には寛容だがそれ以外には厳しい。刀匠で、高品質のソードを作れるが、剣客でもある彼を打ち負かせるほどでないとまず作ってもらえない。(SONEさんより)
シルベスタ=スターロン(人間、男、40歳、ボディービルダー5)
第4代男闘湖塾塾長にして世界最高峰の筋肉を持つ、ザインが世界に誇るボディービルダー。数々の難易度の高いポージングをこなし、ソッチ系の人々を魅了してやまない名アニキ。
業界ではカリスマとして君臨し、人望も胸板も厚い。最近試練を受け、塾長という要職に就いた。(まりけろさんより)
ガリレオス・ハーン(人間、男、53歳)
ベルダイン州立芸術大学ザイン校校長。長身で穏やかな印象を受けるカールを伴った灰色の長髪と長ヒゲが特徴。ジョークがうまく生徒に受けが良い。
富裕層や貴族層にとどまりがちな芸術を広く一般層に広めるべく、日々努力しているが、その思想は副校長と対極にあり難儀している。マエストロとしても有名。(倉瀬さんより)
ミリオン・イェゼール(人間、男、49歳)
ベルダイン州立芸術大学ザイン校副校長。痩身で青白い顔と眼鏡が特徴。端正な容貌だが規律にうるさいのが玉に傷。
一般層、特に亜人種への門戸を開くことに強く反対しており、現校長としばしば衝突している。六貴族家イェゼール家の一族。ピアノの名手で作曲の手腕も優れている。(倉瀬さんより)
コーディ・キャグニー(人間、男、50歳)
盗賊ギルド「キャグニー一家」の首領。筋肉質でがっちりとした体格。角顔。眼光は鋭い。
生まれつき邪悪な人物。血の気が多く好戦的で、第一に殺戮を好む。奴隷に麻薬、強盗殺人何でもござれ。配下の盗賊たちを恐怖によって支配している。マザー・コンプレックス。【参考】
ヴァージニア・ローリー・キャグニー(人間、女、82歳)
コーディ・キャグニーの母親。太め、丸顔。
普段は穏和な老婦人だが、息子を溺愛しており、息子のためならどんな人道に外れた行為にもすすんで協力する。息子の素行については自分が育て方を間違えたからだとは思っていない。敬虔なマーファ信徒で神殿への定期参拝を欠かさない。
マイェル・ランスキー(人間、男、50歳)
オラン系暗黒街の顔役でコーディの腹心。物腰の優雅な痩身の男性。暗黒街随一の紳士。胃炎持ちで神経質なところがあるが、経済センスは抜群。
奴隷市場や麻薬の流通ルートを確立し、賭博や銀行経営など、幅広く事業を展開し、余りある資金をキャグニー一家に提供している。また、「マーダー・インク」(殺人会社)という殺人集団をコーディに提案したのも彼である。(煙屋さんより)
ウォーレン・“バグジー”・シーゲル(人間、男、48歳)
ランスキーの弟分。甘い顔立ちの色男で、陽気で、大ぼらふきで、逆上しやすい。若い頃は殺し屋として名を馳せた。
大女優で浪費家のヴァージン・ビルを愛人に持ち、荒野の真ん中にカジノ街を作ろうと情熱を注いだが、失敗を重ね組織から金銭横領を疑われ始めている。ランスキーが擁護しているので、組織による責任追及だけは何とか逃れていたが、それとはまったく関係なく、自分の短気さから引き起こした殺人事件のため、刑務所に収監される。(このとき証人の口封じに失敗したのは自由の翼団の介入があったとか、ある冒険者達が関っているとか言われる)もっとも刑務所に入れられても、豪華な家具などを持ち込みリッチに権力を振るうあたりは、どこまでいってもバグジーということであろうか。(煙屋さんより)(追加:煙屋さんより)
アルバート・アサグラム(人間、男、35歳)
「マーダー・インク」(殺人会社)という、あらゆる種族、民族からなる、純粋に金で殺しを請け負うプロの殺人集団のボス。「殺し屋の中の殺し屋」と恐れられている。(煙屋さんより)
オォア・フラガー(フェザーフォルク、男、61歳)
盗賊ギルド「自由への翼団」の首領。長身痩躯。肌はネグロ系。細面。剃髪している。
国家体制そのものに対する深い憎悪を抱いている。また強い上昇志向の持ち主でもあり、キャグニー一家への対抗心を剥き出しにしている。
フェレイディス(人間、女、33歳)
盗賊ギルド「ワッキー・ワグ」の首領。15年前に父を亡くし、若くしてその跡を継いだ。ザイン・ガネード神殿の長でもある。巻き毛の長い黒髪。派手な顔立ち。碧眼。雪のように白い肌。背が高くスタイルもよいが、化粧が年々厚くなってきている。赤いドレスを愛用している。常に新鮮な刺激を求めている。
ザイン市の西門をくぐるとすぐ、大通りの右手に逆立ちする山羊の青銅像が見えてきます。この像を看板代わりにしているのが、冒険者の店「逆立ち青山羊亭」です。
店のオーナーはアガー・スカーノーズという中年のオークです。背の丈はそこそこですが恰幅は良く、鼻に大きな刀傷があります。彼自身が店内で仕事をすることはありませんが、カウンターの隅で客に交じって酒を飲んでいることがよくあります。
彼に代わって実際にカウンターでマスター業を務めているのがオルワイン・ジェヘイラという初老のハーフエルフ紳士です。
580年にファーランドからやってきたオークの軍隊によってロマール王国は滅ぼされました。その後、同地に成立したのがオーク・ロマール王国です。彼らはかつてファーランドに存在したオーク帝国の生き残りですが、皇統はオーク帝国滅亡とともに絶えており、現在ではオーク族最大部族の長が王を名乗るに留まっています。
首都はロマールです。
王国には2つの階級が存在します。支配者たる戦士階級と、農夫や職人などの奴隷階級です。王国の経済は実質的にこの奴隷たちからの搾取によって成り立っています。ただし、この階級制度はあまり厳密なものではなく、戦士としての実力次第では幾らでも成り上がることが可能です。オークは全員が戦士階級に属しており、事実上の支配者層を形成しています。人間たちはその多くが奴隷としてオークに仕えています。魔術師や賢者、商人などの知識層は階級制度から独立した存在とされていますが、一般には戦士階級の下位に位置づけられています。
後にオーク族の間にマーファ信仰が広まったことで、奴隷たちの待遇は以前よりも大分改善されています。移動の自由こそありませんが、生産物の3割を自分の所有物として自由に処分することが許されるようになりました。
また、オークの社会は部族制です。部族で最も強力な戦士が族長となって一族をまとめています。ロマールには11の部族が存在し、その中で最大の部族がホス族です。現在はこのホス族の族長がロマール王を兼ねています。
昔々、アレクラストから遠く離れたファーランドの地で、エルフのある氏族がこう考えました。
「我らにも崇めるべき神を!」
しかして彼らは氏族の英雄たちを擁して大いなる探索に着手しました。神々の大戦で魂の破滅した神のうち手頃な神に目星をつけ、その魂を復活させることを目論んだのです。計画は成就し、新たなる神メナウが誕生しました。
メナウはそのエルフ氏族に癒しの技を与えました。彼らは新たに得た癒しの技をもってダークエルフに対抗し、ゴブリンを駆逐し、人間たちを退けます。最終的に他氏族のエルフたちをも吸収した彼らは大陸の東部に巨大な森の帝国を築きました。
繁栄を誇るエルフの帝国に1人の男が復讐を誓いました。男の名は現在では忘れ去られており、ただ“復讐者”(ジ・アベンジャー)としてのみ知られています。彼はある王国に仕える騎士で、故郷をエルフの帝国に滅ぼされたのだと伝えられています。
彼はメナウの正体が“偽る神”オーカスであることを暴き、その信徒をオークと呼びました。オークたちは既に元のエルフとしての本性を失っており、暴力的で醜悪な怪物へと変容していたのです。“復讐者”は寿命が尽きるたびに“リインカーネーション”を使って転生を繰り返し、数百年に渡って闘争を続けました。彼は最後にダークエルフに転生し、その軍勢をもってオーク帝国を滅ぼしたと伝えられています。帝国は焼き払われ、わずかに残った森には妖魔たちが新たな征服者として住みつきました。
オークの残党のうちある者は妖魔の奴隷となり、またある者は荒野へと追われました。しかし多くの者は海を越えて新天地を目指すことを選びます。彼らはやがてアレクラスト大陸へと到達し、この大移動がアレクラスト大陸の歴史を大きく変えていくことになるのです。
520年代、ロマール王国は英雄ルキアルの手腕によって順調にその勢力を拡大していきました。東はザイン王国を征服し、西はベルダイン、ガルガライス、ザーンまでを併合することに成功します。この時期のロマールは王国史上最大の版図を誇りました。
536年にルキアルが病死するとロマール各地で内戦が起きるようになります。これによって王国の勢力は縮小しましたが、「アトンの災厄」によってオランが没落したこともあり、ロマールはなお大陸第一の都市として繁栄していました。
しかし579年、ロマール王国の沿岸に突如として無数の軍船が来寇したことから情勢が一変します。この軍船は全長30mほど、喫水が浅く、細長い船体に3本のマストと20本の櫂を備え、素晴らしい船足を持っていました。また、船側には数門の大砲が据え付けられており、不意をつかれたロマール軍は為すすべもなく彼らの上陸を許してしまいます。船から現れたのは見たこともない異形の怪物でした。隆々たる体躯に醜く歪んだ容貌、細長い筒状の奇妙な武器と大斧で武装していました。
この異形の怪物は自らをオークと名乗り、途中の町や村を制圧しながら王都ロマールへと進軍していきました。王都ロマールでの戦いは1年の間続きましたが、最後にはオーク軍の勝利に終わり、ロマール王国はここに滅亡します。レイドなど、オーク軍の蹂躙を免れた諸都市は主を失って四分五裂しました。
オーク軍はその後も周囲の国々へと侵攻していきましたが、ロマール王国との戦で疲弊しており、今度は満足な戦果を上げることができませんでした。
現在、ロマール周辺には小さな都市国家が点在し合従連衡を繰り返しています。元の王都であったロマールは今でもオークによって支配されています。
また、この戦いからアレクラスト大陸に銃器が登場します。588年にはベルダインでアレクラスト産銃器の第一号が作られ、今では大陸の広い地域に銃器が広まっています。
ロマールを占領したオークたちはそこに自分たちの王国を築きました。オーク・ロマール王国の誕生です。オーク族は粗暴な種族であり、その支配は苛烈なものでした。他国への襲撃もたびたび行われ、オークの王国は巨大な山賊の集団とすら言えるものでした。彼らは主神であるオーカスの教えの下、他種族への暴力を正当なものと捉えていたのです。
この状況に心を痛めたマーファ神殿の女祭たちはオーク族の中にマーファ信仰を広めることを考えました。彼女たちはまず戦いで捕虜になったオークたちを改宗させることを試み、幾多の苦難を乗り越えてそれを成功させます。改宗したオークたちはマーファの宣教師としてロマールに帰還しました。
結果としてこの最初の試みは失敗に終わります。多くの宣教師が命を落とし、マーファ教会はことごとく焼かれました。いったん改宗したオークたちもやがては元のオーカス信仰に戻っていきました。
しかし、ある氏族の長がマーファに改宗したことで状況が変わります。彼は氏族の同胞たちにマーファ信仰を広める一方で、主神オーカスの司祭に働きかけ、その教義を修正させることを考えました。
620年、オーカス最高司祭バァナングルはオーカス神がマーファ女神の友となったと宣言し、全ての暗黒魔法を禁忌としました。オーカス神は今もって光の神とは考えられていませんが、といって邪神でもなく、中立の神になったのだと考えられています。
マイリー、ラーダ、チャ・ザの3神はもはやオーカスとその信徒を敵とは見なしてはいませんが、警戒は怠っていないようです。ファリス信徒の中には未だにオーカスを邪神扱いする者が少なくありません。
イーストエンドはフォーセリアの他地域に比べて精霊界との結びつきが強く、住民たちは日常的に精霊の存在を感じながら生活してきました。精霊たちはしばしば物質界に顕現し、機嫌次第で人間を助けたり、逆に害を為したりします。荒ぶる精霊を鎮め、また、自分たちを助けてくれる精霊への感謝の気持ちから、イーストエンドのそこかしこに精霊を祀る社が建てられています。イーストエンドの地にいる限り、精霊使いたちは大陸にいるときよりも容易に精霊の力を借りることができます。これらの事情もあってかイーストエンドでは伝統的に神への信仰がありませんでした。彼らは太陽を崇め、炎の上位精霊であるフェニックスを太陽の使い「ヒノトリ(日之鳥)」として信仰しています。女性のシャーマンが巫女として癒し手を兼ねます。古の時代には「ヒノミコ(日之巫女、または日之神女とも)」と呼ばれる女王が国を治めていました。支配の実権はその後、貴族支配を経て武士たちに移りましたが、ヒノミコは現在でもイーストエンド社会の最高権威として君臨しています。
ソーサラーは陰陽師と呼ばれます。彼らは古代語やマナを独自の概念(言霊、陰、陽など)で理解します。
竜信仰も盛んです。イーストエンドには多くのノーブル・リザードマンが存在しており、人間たちと良好な関係を保ってきました。ドラゴンプリーストは座禅と内省を通じて悟りを開くことができると考えています。
さらに、イーストエンドには道士や仙者と呼ばれる者たちがいます。彼らは天地自然の気との合一を目指し、日々の修行に明け暮れています。
さて、イーストエンドには神への信仰がなかったと書きましたが、100年ほど前からアノスとの交流が始まり、大陸からファリスの宣教師が渡来するようになりました。ファリス信仰は確実に広まっており、プリースト技能の所持者も下層民を中心に少なからず存在します。これらファリスの信仰者は「ハリシタン(玻璃支丹)」と呼ばれています。最近では他の神々の宣教師もイーストエンドを訪れるようになりましたが、これら大陸から伝来した神々を信仰する者もハリシタンと呼ばれています。
イーストエンドでは最近まで100年に及ぶ長い戦乱が続いていました。この戦乱が収まったのは太陽暦3341年(新王国暦586年)のことです。アベノヨシウジ(安倍義氏)が豪族たちの長としてイーストエンド全土の支配権を掌握しました。
彼は第一に覇者であり、征服者でした。彼は自分に従う者には寛大でしたが、服従するを良しとしない者には容赦しませんでした。彼は全国の所領を自分の直轄領とし、豪族たちから支配権を奪いました。そしてこれに不服を唱えた者たちを国外に追放したのです。
これによって多くの豪族がアレクラスト大陸へと渡り、大陸各地にイーストエンド人の集落が出現することになります。
アザゼル導師(人間、男、46歳)
若い頃、ある村に潜んだヴァンパイアを撲滅するために住民を避難させてからその村にメテオストライクを撃ち込んでヴァンパイアもろとも壊滅させたという逸話を持つ。更にその村の復興に際して、ミスリルゴーレムを破壊して得たミスリル銀を売った利益を使い、多大なる人件費と材料費を払って一日で元通りにしたらしい。
身体能力…、特に精神力が人間を超越している(60点余り)。魔道師としてだけでなく、戦士としての腕も超一流。ドラゴンと殴りあったことがあるらしいが詳細は不明。
左手薬指に銀色に輝く指輪をしているのだが、その指輪の魔力によって死んだ後も転生し、何度も人生を歩むことを宿命付けられている。今現在は4度目の生。
実は料理が得意だったりするのだが、その腕を披露することはあまりない。
性格は快楽主義の刹那主義。面白ければ何でもやるという破茶滅茶な人物。これでも昔は真面目だったというのだから人間、何時どの様に性格が変わるのか分かったものではない。しかし、今でも真面目な面は残っているため、導師として弟子を取ることもできているのであろう。
現在は、ジルバの導師。(ファルターさんより)(追加:夜さんより)
メイフェリス・フィーア・イザルス(オートマトン、女、実年齢不詳)
アザゼルの妻…本人は元妻だと言っているが、アザゼルは妻だと主張し続けている。100年前まではエルフであったが、故郷の集落をダークエルフに襲われその際に死亡した。しかし、アザゼルから贈られた指輪の魔力により転生し、今のオートマトンの身体に移ってしまう。
家事全般が得意なため、今はアザゼルの身の周りの世話をしている。
精霊魔法は使えなくなったので古代語魔法の勉強を再開し、今では導師級になっている。師匠はアザゼル。何だかんだ言っても、アザゼル一筋な女性である…夫婦喧嘩で砦を消滅させたこともあるが。
生前はコールの姉。(夜さんより)
533年~538年に、エレミア、オラン、ロドーリル、そしてプリシスを含む大陸中央部は魔精霊アトンと呼ばれる巨大な怪物によって壊滅的な被害を受けました。この事件は「アトンの災厄」と呼ばれています。カーン砂漠とその遊牧民だけが奇跡的に難を逃れましたが、他の地域はほぼ全てが荒野と化し、大陸中央部から人間は姿を消しました。その後この荒野に妖魔が流入したこともあって復興はほとんどなされていません。
今ではオランとエレミアだけが城塞都市としてかろうじて存続しているだけです。両市とも昔日の栄光は既になく、街のかしこにその残滓を留めるのみとなっています。
「自由人の街道」はその機能を失っており、東西の交通手段としては一般に船が用いられています。
大陸中央部に生じた空白はゴブリンを始めとする妖魔たちによって埋められました。彼らは人間よりも強靱な生命力で荒野を生き抜き、ダークエルフやゴブリンロードの指揮の下で新天地への移住を進めました。移住当初は平原での狩猟が一般的でしたが、やがて遊牧の生活がそれに取って代わりました。水の得やすい地域に定住し、農耕を始めた妖魔もいます。山岳部では鉱山も掘られるようになりました。これらの移住と開発は部族単位で行われ、荒野のそこかしこに妖魔の集落を見ることができます。
妖魔たちは広大な新天地の隅々にまで広がっており、妖魔史上空前の大繁栄時代が今まさに訪れようとしています。
ロマール王国の滅亡とその後数年の間続いたオーク軍との戦争の中で、西部諸国にはより強い国家の登場を望む気運が高まりました。
600年、タラント王アフルが各国の王に統一を呼びかけます。王たちはこれに応え、「ザンティ連邦」が成立しました。
これまでの国は州となり、年に2回、各州の代表がタイデルに集まって議会を開きます。この議会が連邦の最高機関とされています。ザンティ王はこの議会で選出され、任期は8年です。